人と人、人と自然の交流の拠点に! 観音崎公園「つながりの谷」

2024年8月13日火曜日

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 紹介してくれた方

公益社団法人観音崎自然博物館
館長 河野えり子様(写真右側)
博士/学芸員 佐野真吾様(写真左側)

観音崎自然博物館について

 観音崎自然博物館は、照葉樹林や岩礁海岸などの豊かな自然を有する観音崎公園の中にあります。東京湾集水域や三浦半島の自然を中心に、体験型の展示を行うとともに、観察会などを開催し、訪れる人に“リアルな自然と生態”を体感してもらうことで、人と自然をつなぐかけはしとなる博物館を目指しています。また、公園内の植物管理事業や生き物に関する調査研究も行っています。

観音崎公園との関わり

公園でのイベント

 公園内に立地することもあり、多くのイベントを実施しています。中でも「おやこ里海・里山探検隊」シリーズは人気のイベントで、地元に住む親子がたくさん参加してくださっています。園内の森や池などでの観察会はもちろんのこと、海での観察会や海苔すき体験も実施しています。
林内での観察会
海での観察会

生物多様性に配慮した植物管理

 博物館の周辺を中心に花壇や草地など植物管理も実施しています。観音崎公園では様々な山野草を観察することができるので、来園者に楽しんでもらえるように刈り取りの時期に配慮したり、手刈りを行うなど丁寧な管理を実施しています。
 また、三浦半島の東京湾側という範囲では、観音崎公園や周辺の海岸でしか見られない海岸植物も観察することができます。それらについては遺伝子の交雑等に注意しながら、博物館で栽培し、展示保存をしたりもしています。博物館の屋外エリア海岸側では様々な海岸植物を実際に屋外展示しているので、気軽に三浦半島の自然について知ることができます。
スナビキソウ
スカシユリ
ハマカンゾウ
ソナレマツムシソウ

推しスポット「つながりの谷」

「つながりの谷」とは

 私たちの推しスポットは今年(2024年)3月に完成した「つながりの谷」です。
 つながりの谷は、昨年度(2023年度)神奈川県公園協会が実施したクラウドファンディングにて、「癒しと交流・生き物の生息する水辺回復」を目指し、新たに池と花壇を整備したエリアです。
 旧噴水広場と呼ばれるこの場所にはかつて噴水があり、浦賀水道と対岸の房総の山並みを見通すことができる人気のスポットでしたが、老朽化等により噴水が撤去されてしまいました。その後、「県立観音崎公園再生計画」で谷戸の自然再生ゾーンに位置づけられ池が作られましたが、利活用が十分に図られていないエリアとなっていました。
 そんな中、観音崎公園の指定管理者である神奈川県公園協会がこの場所を魅力的で活気あふれる場所として生まれ変わらせるため、クラウドファンディングによって人と自然、人と人とが気軽に交流できる場を整備するプロジェクトを実施しました。
つながりの谷の位置

「つながりの谷プロジェクト」への協力

 私たち博物館は企画立案の段階から携わりました。
 旧噴水広場にある池では、カエルが産卵したり、希少なトンボ類・水生昆虫類が時々発見されるような場所ではありましたが、水深が浅く干上がりやすいため、それらの生き物が定着できるような環境ではありませんでした。生き物の集いやすい立地を活かし、希少な生物が定着でき、訪れる人たちが観察できる環境を整えたいという思いから、干上がらない池をもう1箇所造成することになりました。プロジェクトは神奈川県公園協会の主導で行われましたが、設計や施工にも一部協力しました。
ヤマアカガエルの卵塊

つながりの谷完成!!!公園の新たな名所に!!!

 クラウドファンディングでは、皆様のご支援のおかげで目標額を超える資金を集めることができたということで、今年(2024年)3月には「つながりの谷」の池と花壇が完成しました。


様々な生き物が集う池

 干上がらない池ができたことで、今年はヤマアカガエルが無事に上陸する様子が見られました。池には草も生え始め、池の生き物もどんどん増えています
 また、神奈川県の準絶滅危惧種であるカトリヤンマのヤゴも確認され、これからの定着に期待が持てます。
 将来的にはヘイケボタルが生息し、飛び交う様子を気軽に観察できる場所にしたいと考えています。これからますます多様な生き物が見られる場所になると思うので、ぜひ訪れてみてください。
生き物を観察する様子
この日確認できた生き物
左側からエサキコミズムシ、カトリヤンマ、クロスジギンヤンマ
 
ほかにもこんな生き物たちが観察できます
クロスジギンヤンマ
ヒナカマキリ
ヤマアカガエル
タカチホヘビ

誰もが集い憩える花壇

 池だけでなく、新たに整備された花壇も見どころです。しゃがんだり、かがんだりしなくても、気軽に草花に触れ合える「レイズドベッド花壇」、五感でハーブを楽しめる「ハーブの芝」、園内で育てた草花や隣接した海岸部で見られる草花を植えた花壇などを新たに設けました。
完成して数か月が経ち、花々はしっかり根付き、徐々にではありますが色とりどりの素敵な空間になってきています。
 見ごろはやや過ぎたものの観音崎を代表する海岸植物のハマカンゾウ、夏にかけて咲くハマナデシコ、アジサイなどが見られます。(2024627日時点)夏から秋にかけてはワレモコウやノコンギクなどの様々な花が咲きます。観音崎公園らしい花々をまとめて鑑賞することができます。これからもっと多くの花が咲き、多くの人々が訪れる場になって欲しいです。
レイズドベッド
新しく整備した花壇
ハマナデシコ
ノコンギク
ワレモコウ
これから様々な花が咲きます

観音崎公園の見どころは他にもたくさん

河野館長のおすすめ

 温暖な気候ならではの発達した照葉樹林はおすすめしたいです。園内の樹林の多くはマテバシイが占めていますが、場所によっては巨大なシイやタブ、シロダモが生育していて自然林に近い植生だと言われています。薄暗い林床にはシダも生育していて厳かな雰囲気があります。林内入ることは難しいですが、外から立派な森を眺めてみてください。
照葉樹林の遊歩道

佐野学芸員のおすすめ

 私も照葉樹林について別の視点からおすすめします。
 海岸に近い林で見られるイメージがあまりないかもしれませんが、観音崎公園にはミヤマクワガタが生息しています。また、神奈川県では絶滅危惧II類に判定されているヒラタクワガタも生息しています。これらのクワガタはタブノキやアカガシなどの常緑樹にも集まってきます。このように生物多様性の豊かさを示す照葉樹林が観音崎公園にはあります。博物館でも生体展示をしているので是非見に来てください。
ミヤマクワガタ
ヒラタクワガタ
 自然が豊かなのはもちろんですが、こどもの遊び場もあることもおすすめです。アスレチックの森には長いローラー滑り台があり、子供と一緒に訪れると一日中遊ぶことができます。
長さ約107メートルのローラー滑り台
スピードの出し過ぎには要注意

今後の展望や公園への思い

佐野学芸員より

 観音崎公園には、ここでしか見られない水生昆虫やトンボなどの希少な生き物がいます。しかし、何もしなければこれらの生き物は消えてしまう可能性があります。このことをもっと多くの人に知ってもらいたいと思っています。
 私たちは、観音崎公園と博物館がこの地域の生物多様性を発信し守る拠点でありたいと考えています。その結果、公園に訪れる人が増え、地域全体が盛り上がることにつながると考えています。

河野館長より

 観音崎ではかつて普通に見られたイソギクやアシタバなどの海岸植物が、一時大幅に減少しました。しかし、私たちはその一部を栽培・育成し、観音崎らしい景観を保っています。
 都市公園でありながら、こうした景観を楽しめるのはとても貴重なことだと思います。博物館と公園が協力し、この観音崎の自然の魅力を多くの人に知ってもらい、人と人、人と自然の交流の場として機能していければいいなと思っています。

※※※公園からのお願い※※※

 神奈川県都市公園条例により、観音崎公園では植物の採取が禁止されています。また、飼えなくなった生き物を放流したり、他の場所から移動させたりするのも絶対にやめてください。
 今回紹介した場所の中には、立ち入り禁止のエリア(池や樹林地)も含まれています。生き物の観察をする際は、マップや掲示板等の注意事項をよく確認し、ルールを守り安全にお楽しみください。観察会などのイベントに参加することで、より詳細に自然を楽しむことができます。ぜひ参加してみてください。

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